うさぎの皮下陰睾について
潜在精巣という病気をご存知でしょうか。
潜在精巣とは陰嚢に降りてくるはずの精巣が降りてこず、お腹の中や皮下に留まっている状態のことです。
その中で、お腹の中ではなく、皮下に留まっているものを皮下陰睾といいます。
犬や猫では比較的多い病態ですが、うさぎではあまり数は多くありません。
うさぎを扱っているお店でも判断することは難しいため、動物病院での検診などで初めて発覚することが多いです。
「うちのうさぎは皮下陰睾じゃないかしら?」
「うさぎの皮下陰睾は治療した方がいいの?」
こんな疑問をお持ちの方もいらっしゃると思います。
今回はうざぎの皮下陰睾について解説します。
ぜひ最後までお読みいただき、うさぎについての理解をより深めていただければ幸いです。
雄のうさぎの生殖器について
雄のうさぎの生殖器は
- 前立腺
- 精管
- 精巣
- 陰嚢
- 陰茎
などで成り立っています。
前立腺から精管が出ていて、膀胱の裏を通って精巣につながるという構造です。
精巣は生まれた時点ではお腹の中にあり、生後10〜12週になると陰嚢に降りてきます。
うさぎは警戒したり興奮したりすると精巣をお腹に戻す習性があります。
これは精巣を守るための習性と考えられています。
この場合はお腹を押すと精巣が元の位置に戻るため、病気ではないです。
この習性のこともあり、うさぎの皮下陰睾は専門家でないとなかなか判断が難しいものです。
うさぎの皮下陰睾とは
皮下陰睾とは陰嚢内に降りてくるはずの精巣が降りてこず、鼠蹊部付近の皮下に留まっている状態のことをいいます。
皮下陰睾は片側の精巣におこることが多いです。
うさぎがある程度成長した時に
「精巣が片方しかないかも?」
と気づく方もいらっしゃるかもしれません。
前述の通りうさぎは精巣をお腹に戻す習性もあるため、皮下陰睾であるかどうかを診断するには動物病院での診察が必要です。
うさぎの皮下陰睾は治療が必要?
うさぎの皮下陰睾の治療が必要かどうかは諸説あります。
うさぎの皮下陰睾で治療が必要になる理由として考えられるのは、精巣が腫瘍化するリスクです。
犬や猫では皮下陰睾の精巣は腫瘍化しやすいですが、うさぎでは腫瘍化することは少ないといわれています。
とはいえ腫瘍化リスクが全くないとは言い切れないため、治療をした方が安心です。
うさぎの皮下陰睾の治療
皮下陰睾の治療では皮下に留まっている精巣を外科的に摘出します。
お腹の中に精巣が留まっているわけではないため、開腹する必要はありません。
まずエコーなどで精巣が留まっている位置を特定します。
次にその近くの皮膚を切開して精巣にアプローチし、精管や血管を結紮して精巣を摘出します。
皮下陰睾は片側のみにおこることが多いです。
正常な側の精巣は通常の去勢手術と同じように陰嚢を切開して摘出します。
実際の症例
ここからは当院にて皮下陰睾で去勢手術を行ったうさぎの症例について紹介します。
雄のうさぎの片方の精巣が陰嚢にないことがわかり、皮下陰睾と診断しました。
飼い主様とご相談の上、手術を実施し両側の精巣を摘出しました。
実際の手術後の写真です。

次の写真は摘出した精巣の写真です。

皮下陰睾の精巣は正常の精巣と比べて小さいことがわかります。
手術後は特に問題もなく通常通り過ごしています。
抜糸後の写真がこちらです。

綺麗に傷も治り、経過は良好です。
まとめ
いかがでしたか?
うさぎの皮下陰睾は稀に腫瘍化するリスクがあります。
腫瘍化する前に治療を行うことでより安心してうざきとの時間を過ごしていただけると考えます。
また皮下陰睾は専門家でないと病態の判断が難しいものです。
定期的に動物病院に連れて行き、検診を受けることで発見できることもあります。
当院ではうさぎの診療も行っております。
うさぎに関して気になることがありましたらお気軽に当院までご相談ください。
執筆担当:院長 渦巻浩輔