猫の子宮角形成不全について

猫の子宮角形成不全という病気を知っていますか。
猫の子宮は2つの子宮角に分かれていますが、子宮角形成不全は片方の子宮がないという病気です。
特に病気のサインがないため、避妊手術をしなければ気づかないことがほとんどです。
なかなか遭遇しない珍しい病気ですが、今回は実際の症例を交えて解説します。
ぜひ最後までお読みいただき、愛猫が子宮角形成不全と診断された際にお役立てください。

猫の子宮角形成不全について

猫の子宮角形成不全は、本来2つある子宮角が片方生まれつき欠損している病気です。
画像に示す通り、子宮は子宮体から2つの子宮角に分かれ、その先に卵巣がそれぞれ付着しています。
子宮角形成不全では子宮角のみが欠損しており、卵巣は2つとも存在していることがほとんどです。
症状としては妊娠しにくい、あるいは妊娠ができないという繁殖上の問題が挙げられます。
そのほかの徴候はないため日常生活には特に支障がなく、猫の子宮角形成不全が発覚するのは避妊手術の最中であることがほとんどです。
避妊手術の前に確認しようとしても、猫の子宮はとても細いため超音波検査で両側とも子宮角があるかを確認するのは非常に難しいです。

猫の子宮角形成不全で注意すべきことは、他の臓器も形成不全になっていないかということです。
特に、腎臓が形成されているかどうかは必ず獣医師に確認してもらいましょう。
胎児期に体がつくられる際に、腎臓は子宮角と共通の細胞から形成されるため、同じように形成不全になることがあります。
腎臓については避妊手術中に実際に見て確認をしたり、超音波検査によって確認してもらうことが可能です。

猫の子宮角形成不全の原因

猫の子宮角形成不全の原因は、先天的な異常や性染色体の異常などが考えられていますが、はっきりとしたことはわかっていません。

猫の子宮角形成不全の治療

猫の子宮角形成不全の治療は、避妊手術によって子宮を摘出することです。
猫の子宮角形成不全には特に症状がありませんが、遺伝によって同じ病気を子孫に残すことを避けるためにも避妊手術を行うことが推奨されます。

避妊手術では卵巣を取り残さないことが重要ですが、子宮角がない卵巣を見つけるのは通常より難しいです。
卵巣が残ってしまうと避妊手術後も発情が続くため、猫本人にも飼い主様にもストレスがかかります。
信頼のおける獣医師に避妊手術を依頼し、摘出した子宮と卵巣を確認させてもらうことが大切です。

6ヶ月齢の猫の子宮角形成不全の症例

6ヶ月齢の猫の子宮角形成不全の症例をご紹介します。
こちらの猫ちゃんも避妊手術の際に子宮角形成不全が見つかりました。

開腹してまず右側の子宮角を探し、右側の卵巣・子宮角を切除しました。その後左側の子宮角が見つからず、左側の卵巣を見つけ出した際に子宮角が欠損していることがわかりました。
写真の通り左側の子宮角はありませんでしたが、卵巣は形成されていたため摘出しています。
摘出した卵巣と子宮角を病理組織学的検査に提出したところ、左の子宮角は形成不全であると診断されました。

また、手術中に左側の腎臓も欠損していることがわかりました。
腎臓は片側が欠損していても片側が健康であれば問題なく生活することができます。
しかし、残っている方の腎臓に異常が生じた場合、もう片方の腎臓に助けてもらうことができないため、腎機能が低下しやすいことに注意が必要です。

まとめ

猫の子宮角形成不全は非常に珍しい病気であり、避妊手術の際に見つかることが多いです。
手術に慣れていないと、卵巣を取り残す場合もあるので注意が必要です。
繁殖上のトラブル以外は特に症状がないため気づかないことが多いです。
腎臓も欠損している場合があるため、早めに気づいて腎臓に対する適切なケアをすることも重要です。
猫の子宮角形成不全やそれに伴う腎臓の欠損に早めに気づく意味でも、早めに避妊手術をしておくことが大切です。
当院では猫の避妊手術も承っております。また、避妊手術で子宮が見つからなく、発情がずっと続く場合などでも対応致します。
お気軽にご相談ください。

執筆担当:獣医師 菅原小櫻

この記事を書いた人

菅原小櫻

日本大学 生物資源科学部獣医学科卒業。どんな些細なことでも話しやすい獣医師でありたいと思っております。少しの変化や気になることなど、なんでもご相談ください。