猫ヘルペスウイルス性角膜炎について

目がしょぼしょぼしている、なんとなく涙が多い気がする。
飼っている猫ちゃんにそんな症状はありませんか?
もしかしたらそれは猫ヘルペスウイルス性角膜炎によるものかもしれません。

今回は実際の症例を通して、猫ヘルペスウイルス性角膜炎を詳しくお話ししていきます。

猫ヘルペスウイルス性角膜炎はその名の通りヘルペスウイルスが原因の感染症です。
猫ちゃんの唾液や鼻水などウイルスを含んだ分泌物を口や鼻から吸い込むことによって感染が起こります。
感染猫に触れた人間が他の猫に触れたり、食器を共有することでも感染が成立する場合もあり、とても感染力が高いウイルスです。

猫ヘルペスウイルスは主に猫ウイルス性鼻気管炎の原因となり、鼻水やくしゃみや発熱など、人間で言う風邪症状が現れることが多いです。
しかし、風邪症状以外にも結膜炎や角膜炎など眼にだけ症状が出ることもあり、適切に治療ができないと失明する恐れもあります。

猫ヘルペスウイルス性角膜炎の実際の症例

今回紹介するのは目のしょぼつき、涙が多いと来院された猫ちゃんです。
来院時、猫ちゃんの左眼は右眼に比べるとしょぼついており、涙が多く、まぶたが少し腫れていました。

実際の症例の顔

眼のしょぼつき、涙が出ているなどの症状が出ている場合、眼の表面の角膜に傷がついていることがあります。
そのため、角膜に傷がないか調べるための検査であるフルオレセイン染色を使用しました。
フルオレセイン染色では、角膜に傷があると黄緑色に染色されます。
下の写真のように今回の症例では眼が広く黄緑色に染まったため、「角膜に傷がある」つまり「角膜潰瘍」と診断しました。また、角膜の傷のでき方がヘルペスウイルス性の角結膜炎に類似しているため(地図状潰瘍)、一般的な角膜潰瘍の治療を行いながら、ウイルスの検査も実施しました。

来院時にフルオレセイン染色をした眼

その後、ヘルペスウイルスによる角膜炎と診断し、抗ウイルス点眼薬と内服の抗ウイルス薬を併用して治療を行いました。
数週間にわたる治療を行い、涙の量や眼のしょぼつきは良化していました。
再度フルオレセイン染色すると黄緑色に染色されず、角膜は著しく良化していることがわかります(下写真参照)。

数日間の治療した後のフルオレセイン染色をした眼

ヘルペスウイルスによる猫ウイルス性鼻気管炎は非常に多く見られる病気で、鼻水やくしゃみなどの風邪症状以外にも結膜炎や角膜炎(猫ヘルペスウイルス性角膜炎)を起こすことがある病気です。
内服薬や点眼により治療が可能ですが、一度感染した猫は神経の中にウイルスを保有しているため、回復したように見えても加齢やストレスで免疫力が低下すると再発することがあります。
そのため、季節の変わり目で急に寒くなってきた、ストレスを感じやすい環境の変化がある場合には、猫ちゃんたちの免疫力が落ちないように体調管理することが重要となります。

執筆担当:院長 渦巻浩輔

この記事を書いた人

渦巻浩輔

日本大学 生物資源科学部獣医学科卒業。どんな些細なことでも話しやすい獣医師でありたいと思っております。少しの変化や気になることなど、なんでもご相談ください。