犬の若年性蜂窩織炎について
「愛犬が若年性蜂窩織炎と言われた」
「皮膚が赤くなり痛がっていてかわいそう」
「なかなか治らないけど大丈夫かな」
このように思われている方もいらっしゃるのではないでしょうか?
若年性蜂窩織炎は子犬に見られる皮膚の病気です。
人間にも同じ名前の病気がありますが、犬では人間の場合とは少し異なり、命に関わる危険があります。
今回は犬の若年性蜂窩織炎について実際の症例を交えながら解説していきます。
愛犬のなかなか治らない皮膚病でお困りの方は、ぜひ最後までお読みいただき、ご参考にしていただければ幸いです。
若年性蜂窩織炎とは
若年性蜂窩織炎とは、生後3週間〜4ヶ月ほどの子犬に見られる皮膚の病気です。
特定の犬種で発生しやすく、
- ダックスフンド
- ラブラドールレトリーバー
- ゴールデンレトリーバー
- ビーグル
- チワワ
などで多く見られます。
若年性蜂窩織炎の原因はわかっていませんが、免疫系の異常や遺伝的な要因が関わっていると考えられています。
若年蜂窩織炎の症状
若年性蜂窩織炎は口や眼の周りの皮膚に激しい症状が急速に出るのが特徴です。
代表的な症状は、
- むくみ
- 腫れ
- 肉芽腫(しこり)
- 水ぶくれ
- 膿疱(小さなポツポツ)
- 脱毛
- 痛み
などがあり、症状の進行とともに膿や浸出液が出たり出血したりします。
皮膚以外には局所または全身のリンパ節が腫れることもあります。
症状が重くなると、
- 食欲低下
- 元気消失
- 発熱
- 全身の関節痛
が起こることもあり、注意が必要です。
若年性蜂窩織炎は子犬に多いことから、上記の症状が命に関わる危険もあります。
愛犬の皮膚に異変を感じたら、早めに動物病院を受診してください。
若年性蜂窩織炎の検査
若年性蜂窩織炎の検査には、
- 細胞診
- 皮膚生検
- 細菌検査
があります。
以下に詳しく解説します。
細胞診
細胞診は、患部の浸出液や皮膚の一部を顕微鏡で見て、何が含まれるか調べる検査です。
若年性蜂窩織炎の場合には、マクロファージや好中球といった炎症の際に増える免疫系の細胞が多数確認できます。
皮膚生検
細胞診で診断がはっきりしない場合には、皮膚生検を行います。
患部の皮膚を一部切り取り、組織検査へ出すことで、若年性蜂窩織炎であるかどうか確定することが可能です。
細菌検査
患部の滲出液を培養して細菌がいないか調べます。
若年性蜂窩織炎では、細菌はいないのが一般的です。
ただし、若年性蜂窩織炎の犬は免疫力が落ち、皮膚が感染しやすい状態であるため、二次的に細菌感染を起こしている場合もあります。
若年性蜂窩織炎は発症初期の場合、他の皮膚病との区別が付きづらいものです。
しかし激しい症状が急速に進行していくため、若年性蜂窩織炎の検査と並行して治療を開始することが重要です。
若年性蜂窩織炎の治療
若年性蜂窩織炎は他の皮膚病で一般的な治療では治りません。
抗生剤や少量のステロイドでは効果がないからです。
若年性蜂窩織炎の治療ではステロイドを高用量使うことが重要です。
しっかり高用量のステロイドを使うことで、比較的すぐに薬の効き目が現れます。
症状の改善が見られたら、1〜4週間かけて徐々に薬を減らしていきます。
ステロイドを使用している期間は免疫力が落ちているものです。
皮膚は感染を起こしやすい状態のため、抗生剤を併用することもあります。
皮膚の状態が改善されるまでは、患部のジュクジュクした部分を水で洗い流し、清潔に保つのもおすすめです。
ステロイドの副作用を緩和するため、ステロイドの量を減らし免疫抑制剤を組み合わせることもあります。
状態に応じて薬の配分を決めていきます。
実際の症例
ここからは実際の症例をご紹介します。
症例は3ヶ月のトイプードルです。
皮膚が荒れており、他院の治療で改善しないとの主訴で来院されました。
画像は実際の症例の写真です。
左右のまぶたがやや赤く、腫れています。

これは下あごの写真です。
脱毛と赤み、腫れがあり、一部には出血や浸出液の分泌も認められます。

皮膚生検を実施したところ、若年性蜂窩織炎と診断されました。
診断後は速やかにステロイドの使用を開始し、無事症状の改善がみられました。
まとめ
若年性蜂窩織炎は痛みが強く、悪化すると命に関わる可能性のある病気です。
飼い始めたばかりの愛犬の皮膚に気になることがある方は、様子見せずに早めに動物病院にかかりましょう。
当院では皮膚生検も積極的に行なっております。
愛犬の皮膚病がなかなか治らない場合には、お気軽に当院までご相談ください。
執筆担当:院長 渦巻浩輔