ハムスターの皮膚腫瘍について

「ハムスターの皮膚に小さなできものがある気がする」
「触っても痛がらないけれど、様子を見ていい?」
「ハムスターは病院に連れて行っていいの?」

このような疑問をお持ちのハムスターの飼い主様はいらっしゃいませんか?
もしかしたら、ハムスターの皮膚の腫瘍かもしれません。
飼い主様がハムスターの皮膚に異常を感じても、体が小さいからと様子を見てしまうことがあると思います。
しかし、体重わずか数十グラムのハムスターでは、わずかな腫瘍でも短期間で急激に大きくなることがあります。
また、擦れる位置にできると自咬や出血を招き、感染症のリスクに繋がるため、放置は危険です。

今回は下腹部に皮膚腫瘍ができた症例をもとに、ハムスターの皮膚腫瘍について解説し、当院で行った治療の流れをご紹介します。

ハムスターの皮膚腫瘍について

ハムスターの皮膚にみられる腫瘍にはどんなものがあるのでしょうか?

良性のものでは

  • 脂肪腫
  • 線維腫

悪性度の高いものには

  • 扁平上皮癌
  • メラノーマ
  • 軟部組織肉腫

などが存在します。

腫瘍の初期の大きさや見た目だけで良性か悪性かを判別することは困難なため、診断には細胞診や病理検査が推奨されます。
ただし、飼い主様のご意向や個体の負担から、摘出のみを希望されるケースも珍しくありません。

ハムスターの皮膚腫瘍の症状

ハムスターの皮膚に腫瘍ができると

  • 皮膚のしこり
  • 腫瘍からの出血
  • 腫瘍部分の自咬

などの症状が見られることがあります。

特に、腫瘍が擦れたり、気にしてかんだりしていると、皮膚に感染が起こることがあるため注意が必要です。

また、悪性度の高い腫瘍である場合には

  • 元気食欲の低下
  • 体重の減少
  • 腹水

などの症状が見られることがあります。
悪性度の高い腫瘍は、肺などに転移して命に関わることもある怖い病気です。

皮膚のできものに気づいたら、早めに動物病院を受診することをおすすめします。

当院での実際の症例

実際に当院に来院した症例をご紹介します。
今回ご紹介するのは、10ヶ月齢のジャンガリアンハムスターの雄です。

飼い主様が下腹部に、直径5 mmほどのしこりを発見。
当初は様子見をされていましたが、少しずつ大きくなってきたため来院されました。

触診では周囲の組織にはついておらず、手術で取れそうだと判断。
全身状態も良好だったため、オーナー様と相談の結果、早めに摘出することにしました。手術は、吸入麻酔による全身麻酔の上で腫瘍摘出を実施。
以下が手術中の写真です。

手術は出血を最小限に抑えながら短い手術時間で行いました。
こちらが手術で摘出した腫瘍の写真です。

覚醒もスムーズで、術後は抗菌薬と鎮痛薬を処方して帰宅していただきました。

1週間後の抜糸時には傷の腫れや感染もなく、元気・食欲ともに良好でした。
飼い主様のご希望で病理検査は実施していませんが、再発もなく順調な経過をたどっています。

小動物手術で気をつけたいポイント

ハムスターは小さいため、手術や通院に抵抗がある飼い主様もいらっしゃると思います。
犬や猫を見ている動物病院では、診察してもらえないこともあります。
しかし、ハムスターの寿命を少しでも長くするためには小さな変化でも動物病院へ連れていくことが大切です。
特に、ハムスターの診察や手術をしている動物病院は限られているので、必ず事前に確認しておきましょう。

まとめ

ハムスターの皮膚腫瘍は良性のことも多い一方、短期間で大きくなり自傷や感染を招くリスクがあります。
飼い主様が「小さいから大丈夫」と放置している間に悪化するケースも少なくありません。
また、悪性腫瘍の場合には命に関わることもあるため、早めに動物病院を受診するのがおすすめです。

当院ではハムスターを含む小型哺乳類の外科手術にも対応し、飼い主様のご希望に沿った治療プランをご提案しております。
ハムスターの身体に、何かできものがあるなどの違和感を感じた場合には、ぜひお気軽にご相談ください。

執筆担当:院長 渦巻浩輔

この記事を書いた人

渦巻浩輔

日本大学 生物資源科学部獣医学科卒業。どんな些細なことでも話しやすい獣医師でありたいと思っております。少しの変化や気になることなど、なんでもご相談ください。