犬の脾臓腫瘤について
近年、ペットフードの改良や動物医療の進歩により、犬の高齢化が進んでいます。
シニア期を迎えても元気いっぱいな犬が増えており、10歳、15歳を超えて過ごす子も珍しくありません。
その一方で、高齢になるほど腫瘍(できもの)が見つかる確率も高くなることをご存じでしょうか。
「健康診断でしこりがあると言われたけれど、どういう意味?」
「脾臓にできものがあると言われた…悪いものなの?」
そんな不安を抱えた飼い主さまも多いと思います。
脾臓(ひぞう)にできるしこりには、良性から悪性までさまざまな種類があり、放置すると破裂し命に関わるものもあります。今回は、その中でも高齢犬でよく見られる脾臓腫瘤(結節性過形成)について、当院で診断・治療した症例を交えながら解説します。
ぜひ最後までお読みいただき、愛犬の健康管理の参考にしていただければ幸いです。
犬の脾臓腫瘤とは?

脾臓はお腹の左側にある臓器で、
- 血液の貯蔵
- 古くなった赤血球の処理
- 免疫の調整
を担っています。
この脾臓に「腫瘤(しゅりゅう)=しこり」ができることがあります。
代表的なものは次の通りです。
良性のしこり
脾臓には良性のしこりができることもあります。
代表的なものとしては以下のような病変があります。
- 結節性過形成
- 血管腫
脾臓は非常に血管が豊富で出血しやすい臓器です。
そのため、たとえ良性であっても腫瘤が破裂するリスクを考慮し、外科的切除(脾臓摘出)の検討が必要となります。
悪性のしこり
一方で、脾臓には悪性の腫瘍が発生することもあります。主なものは以下の通りです。
- 血管肉腫
- 転移性腫瘍
- 脂肪肉腫
これらは破裂や転移のリスクが高く、早期診断と外科治療が重要です。
画像検査や病理検査で性状を見極め、全身状態を考慮した治療方針を立てることが求められます。
脾臓腫瘤の症状
脾臓の病気は、初期の段階では無症状のことがほとんどです。
しかし進行することで以下のような症状が現れることがあります。
- お腹の張り
- 食欲不振
- 元気消失
- 貧血
- 突然倒れる(破裂による出血)
異変に気づいたときにはすでに出血し重症ということも少なくありません。
だからこそ、健康診断での早期発見がとても重要です。
脾臓腫瘤の診断方法
脾臓にできものがあるかどうかは次の検査でが必要です。
- レントゲン検査:お腹の中に腫瘤がないかを確認
- 超音波(エコー)検査:腫瘤の大きさ・状態・出血の有無・他の臓器との関係を確認
- 血液検査:貧血の確認
- 病理組織学的検査:摘出した腫瘤を顕微鏡で調べ、良性悪性を診断
脾臓腫瘤は画像検査だけでは「良性か悪性か」の判断が難しいため、手術により摘出した腫瘤を病理検査に供することが最終的な診断方法になります。
実際の症例紹介
ここからは、当院で脾臓腫瘤の摘出手術を行った症例をご紹介します。
症例は7歳のトイプードルです。健康診断で受診された際、偶然脾臓腫瘤が見つかりました。
以下の写真の通り、レントゲン検査では腹部に腫瘤状の病変があることが分かります。

また、以下の写真の通りエコー検査では脾臓から腫瘤が発生していることが分かりました。

そして、飼い主様と相談の上、脾臓の摘出手術を行いました。
下の写真の通り、脾臓に腫瘤があることが分かります。摘出した脾臓を病理検査に提出したところ、結節性過形成(Nodular hyperplasia)という診断が返ってきました。

結節成過形成は高齢の犬でよく見られる良性の変化で、腫瘍ではなく、脾臓の組織が増殖して腫瘤になったものです。
悪性腫瘍(血管肉腫など)は否定され、化学療法などの追加治療の必要もありませんでした。
手術後の経過も良く、手術から2日後には元気に退院していきました。
まとめ
今回は、犬の脾臓腫瘤(結節性過形成)について、実際の症例を交えて解説しました。
残念ながら、脾臓腫瘤に対する予防法はありません。
ただし、定期的な健康診断を続けることで、無症状のうちに腫瘤を見つけることができます。
早期発見できれば、手術を安全に行える可能性が高くなります。
「いつも通り元気だから大丈夫」と思わず、 定期的な検査で見えない異常を早めに見つけてあげましょう。
執筆担当:院長 渦巻浩輔