ウサギの爪ダニ症について

みなさまは、爪ダニ症という病気を聞いたことがありますか?
爪ダニ症とは、うさぎの皮膚にウサギツメダニが寄生し、フケや脱毛を引き起こす病気です。
ウサギツメダニはウサギという名前が付いていますが、人間にも感染するため、注意が必要です。

「最近ウサギの抜け毛が多い気がする」
「よく見ると毛にフケがついている」
「痒そうにしている」
このような場合、ウサギが爪ダニに感染しているかもしれません。

今回はウサギの爪ダニ症について実際の症例を交えながら、解説していきます。
ぜひ最後まで読んでいただき、ウサギの爪ダニ症についての知識を深めていただければ幸いです。

爪ダニ症とは

爪ダニ症とは、ウサギツメダニという寄生虫の感染症です。
ウサギツメダニは、ウサギの皮膚に寄生し、成虫から産卵、孵化、成長、と一生をウサギの皮膚の上で過ごします。
寄生場所は頭から背中にかけてが最も多いです。
ウサギツメダニの成虫は0.3mmから0.5mmほどの大きさで、大きなかぎ爪を持っています。

感染の原因は、既に感染しているウサギと接触することです。
感染のタイミングとしては、ペットショップやブリーダーの家で飼育されていた時、つまり飼い主様の家へ来る前の場合が多いと言われています。
ウサギツメダニは、感染しているウサギとの接触により、人間にも感染することがわかっています。
人間にも痒みを起こす場合があるため、注意が必要です。

爪ダニ症の症状

爪ダニ症は、感染してすぐの頃は無症状のことが多く、感染が進むと次第に下記のような症状が確認されます。

  • フケ
  • 脱毛
  • 赤み
  • 痒み

ウサギの免疫力が落ちていたり、毛づくろいが十分にできていない場合、フケや脱毛が顕著になります。
人間が感染した場合には、赤みや痒みといった皮膚炎を起こしますが、ウサギツメダニが人間に寄生し続けることはありません。

感染初期や無症状の場合には、飼い主様も感染に気付きづらいため、注意が必要です。
感染初期はウサギツメダニの数が少ないため、一度の検査では見つからないこともあります。
爪ダニ症を疑う場合には、間隔をおいて再度検査を行います。

ウサギを飼い始めた際には、一度検査を受けていただくと共に、予防的に駆虫薬を使用することもおすすめです。

爪ダニ症の検査方法と治療

ウサギツメダニの感染を調べるには、フケや毛に押し当てたテープを顕微鏡で検査します。
感染がある場合には、ウサギツメダニの成虫や卵が観察されます。
治療方法は、ウサギツメダニの駆虫薬であるセラメクチンを皮膚に滴下することです。
セラメクチンは卵には効果がないため、卵が孵化し全てのウサギツメダニを駆虫できるまで、数回に渡り滴下する必要があります。
ウサギを複数匹飼っている場合には、家庭内での感染の広がりを防ぐため、同居しているウサギにもセラメクチンを使用していただくと良いでしょう。

ダニの駆虫薬として犬や猫に使われる薬の中には、フィプロニルという成分を含むものがあります。
フィプロニルは、ウサギに対して中毒を引き起こし、命に関わる危険があるため、絶対に使用してはいけません。
自己判断での市販薬の使用は注意が必要ということです。

実際の症例

ここからは実際に来院された症例をご紹介します。
画像は実際の症例の写真です。

ウサギの首元の毛に、複数のフケが絡まっている様子が確認できます。

顕微鏡検査により、ウサギツメダニが見つかりました。
駆虫薬のセラメクチンを用いて、速やかに治療しました。

まとめ

今回はウサギの爪ダニ症について解説しました。
ウサギの爪ダニ症は、人間にも感染することがあるため注意が必要な病気です。
もしウサギにフケや脱毛などの症状が見られた場合には、病院で原因をしっかりと検査しましょう。
感染の疑いがある際には、飼い主様の手洗いやケージの掃除をこまめに行っていただくことをおすすめします。
ウサギを飼い始めた際には、予防としての駆虫薬の使用も効果的です。

ウサギの駆虫薬についてや、気になる皮膚症状などは一度当院までご相談ください。

執筆担当:獣医師 渦巻浩輔

この記事を書いた人

渦巻浩輔

日本大学 生物資源科学部獣医学科卒業。どんな些細なことでも話しやすい獣医師でありたいと思っております。少しの変化や気になることなど、なんでもご相談ください。