猫のトリコモナス症について

ワンちゃんやネコちゃんを飼い始めた際には、必ずといっていいほど
「虫下しをしましょうね」
とペットショップやブリーダーや動物病院から言われます。
それだけワンちゃんやネコちゃんには寄生虫感染が多いということですね。

トリコモナス症とは

今回ご紹介するのはトリコモナス症というワンちゃんにもネコちゃんにも起こりうる寄生虫感染症についてご紹介していきます。

トリコモナスは腸トリコモナスという寄生虫が原因で発症する病気です。
腸トリコモナスは特に若齢の子や、免疫力が下がってしまっている状況下では下痢などの症状を発症します。
また、一部のトリコモナスでは人獣共通感染症の可能性が示唆されています。
ワンちゃんネコちゃんを飼い始めた時に虫下しを勧められるのはこういった怖い寄生虫が寄生している可能性があるからなんですね。

猫のトリコモナス症の症例

症例は5ヶ月の猫ちゃんで、お家に迎えた時から軟便を繰り返すという主訴で来院しました。
便検査で幸いにも大量のトリコモナスを確認(確認できない場合も多い)できたため、すぐに駆虫薬により治療を開始しました。

虫の外見は、実際に顕微鏡で観察すると洋梨のような形をしていて、くるくると動き回っているのが特徴的ですね。

駆虫薬で多少便は改善しましたが、やや軟便は残るため食餌の変更などを試していき、無事通常の硬さの便になってくれました。

多くの寄生虫は検査をしなくても、虫下しを投与することによって体内から駆除されるのですが、実はトリコモナス症はそうもいきません。
腸トリコモナスは、多くの方々が一般的に使う虫下しでは駆除されず、特殊な薬の投与が必要になります。
そのため、動物病院で検査を受けて、トリコモナス症の診断を受けてからではないと、駆除を開始することができません。

そして、どんな便でもいいから便検査をしたらトリコモナスを診断できる、というわけでもないです。
トリコモナスの活動性は時間が経てば経つほど低下していきます。
そのため、便検査でトリコモナスを診断するためには新鮮な便で検査することが推奨されています。
もしトリコモナス症の検査をするのであれば最低でも6時間以内、可能であれば排便直後の便を持っていくようにしましょう。

トリコモナス症は検査や治療が他の寄生虫より難しいため、しっかりとした検査と治療が必要となります。
ワンちゃんネコちゃんを飼い始めた時や、下痢してしまっている時は動物病院にご相談ください。

執筆担当:院長 渦巻浩輔

この記事を書いた人

渦巻浩輔

2013年大学卒業後、埼玉県坂戸市のブン動物病院で4年間の勤務医を務め、犬や猫、エキゾチックアニマルの診療に携わる。2016年からは東京都の小滝橋動物病院グループに勤務し、CTやMRI、心臓外科、脳神経外科を始めとした高度医療施設に身を置き、2019年からは同動物病院グループの市ヶ谷動物医療センターにてセンター長を務める。高度医療に携わりながら地域の中核病院として診療を行なった。2022年11月、東京都板橋区赤塚に成増どうぶつ病院を開院する。日本獣医循環器学会・日本獣医麻酔外科学会・獣医アトピー・アレルギー・免疫学会・日本獣医エキゾチック動物学会所属。特に循環器・呼吸器の診療を専門とし、心臓病についてのセミナー講師も行っている。