犬の画鋲の内視鏡摘出について

ワンちゃんが何かおもちゃをくわえていて、飲み込みそうになっちゃった。
そんなヒヤっとする経験をされたことはないでしょうか?
ワンちゃんは好奇心旺盛で、初めてみたものや興味のあるものを口の中に入れてしまう習性があります。
ワンちゃんが口の中に何かを入れる行動は、人間が何かを確かめる時に手で持ち上げて確かめるのと同じような行動なんですね。
口の中に入れるだけなら大きな問題はなることは少ないのですが、中には危険なものを飲み込んでしまうことがあります。
危険度が高いものには様々なものがありますが、その中の一つに鋭利なものが挙げられます。
例えば、竹串、がびょう、釘、鶏の骨などですね。
こういったものを間違えて飲み込んでしまった場合に、胃や腸に刺さってしまって消化管に穴が開くことがあり、場合によっては命に関わることがあります。

今回ご紹介する症例は画鋲を間違えて飲み込んでしまったワンちゃんです。

犬の画鋲(がびょう)を内視鏡摘出した症例

症例は6ヶ月齢の仔犬で、もしかしたら画鋲を食べてしまったかもとのことで来院されました。

レントゲンを撮影してみたところ胃に画鋲と思われるものが認められました。

黄色い丸ががびょうです。

一般的に小さいものの誤食であれば、催吐処置という薬で吐かせる処置を行いますが、画鋲のような鋭利なものは吐かせる時に食道に刺さってしまうことがあるため、麻酔下での処置が必須となります。
今回は内視鏡での摘出を試みました。

以下がこのワンちゃんの画鋲を摘出した動画です。

画鋲を始めとした鋭利な物の内視鏡摘出は、処置の際に消化管壁に引っかかってしまいそもそも摘出できなかったり、食道や胃に刺さってしまい重篤な合併症が出てしまうことがあります。
今回は運よく消化管への穿孔はなく、内視鏡で摘出することができ、翌日元気に退院致しました。

今回のような事故を防ぐためには、普段から拾い食いをしないようしつけることが重要です。
今回の症例は幸いなことに内視鏡で摘出することに成功し、事なきを得ましたが、全ての症例がこのような経過を辿れるわけではありません。画鋲が消化管に穿孔した場合は腸内容物が腹腔内に漏れ出て、腹膜炎をおこし、場合によっては命を落としてしまうことがあります。

そうならないように、場合によっては開腹手術で摘出が必要な場合もあります。

摘出した画鋲

当院では内視鏡を完備し、技術も熟練しているため、鋭利な物でも場合によっては内視鏡で摘出が可能なこともあります。
もし家のワンちゃんが何かを誤食してしまったかもしれない場合は、すぐに動物病院にご連絡ください。

執筆担当:院長 渦巻浩輔

この記事を書いた人

渦巻浩輔

2013年大学卒業後、埼玉県坂戸市のブン動物病院で4年間の勤務医を務め、犬や猫、エキゾチックアニマルの診療に携わる。2016年からは東京都の小滝橋動物病院グループに勤務し、CTやMRI、心臓外科、脳神経外科を始めとした高度医療施設に身を置き、2019年からは同動物病院グループの市ヶ谷動物医療センターにてセンター長を務める。高度医療に携わりながら地域の中核病院として診療を行なった。2022年11月、東京都板橋区赤塚に成増どうぶつ病院を開院する。日本獣医循環器学会・日本獣医麻酔外科学会・獣医アトピー・アレルギー・免疫学会・日本獣医エキゾチック動物学会所属。特に循環器・呼吸器の診療を専門とし、心臓病についてのセミナー講師も行っている。