うさぎの子宮出血について

うさぎの子宮疾患は、成熟した未避妊メスのうさぎに見られる疾患です。
これには子宮腫瘍、子宮内膜症、子宮内膜炎などが含まれます。
一般的にうさぎは犬や猫と比べて健康診断で精密検査をすることが少ないため、見落とされがちです。
今回は、子宮疾患で緊急手術を行ったうさぎさんについて、ご紹介致します。

うさぎの子宮疾患の典型的な症状には、出血による血尿、食欲不振、体重減少、腹部の膨張があります。
出血による血尿は比較的緊急性が高く、貧血を起こし、命を落としてしまう可能性もあります。
そのため、たかが血尿と様子見るのではなく、ある程度緊急性を持って治療に臨む必要があります。

血尿を伴う子宮疾患に対して子宮卵巣的手術を行ったうさぎ

症例は1歳11ヶ月のうさぎさんで、血尿のため他院で止血剤による治療を行われていましたが改善せず、大量に出血が認められたため、急遽来院されました。

当院での診察で子宮疾患が疑われ、血液検査を実施したところ既に貧血を呈していました。
そのため、飼い主様と相談の上、その日のうちに緊急手術を行うこととしました。
ここからは写真を交えながら手術のご紹介をいたします。
苦手な方はご遠慮ください。

当院で確認された血尿

手術は全身麻酔をした上で行われました。
一般的にうさぎさんの全身麻酔は、犬や猫よりも呼吸が止まってしまうことが多く、リスクが高いと言われています。
今回の手術でも、呼吸が止まらないように慎重に行われました。

手術は腹部の真ん中を切開し、子宮と卵巣を摘出する方法で行われました。

腹腔外に露出した子宮。赤黒くなっている部分が出血していた部分です。
摘出した子宮と卵巣

手術後、麻酔から無事目覚め、血尿は止まり順調に回復していきました。
摘出した子宮と卵巣は病理組織検査が行われ、子宮内膜静脈瘤と子宮内膜炎と診断されました。
子宮内膜静脈瘤が破裂し、大量出血が認められていました。

無事手術が終わってよかったね!

うさぎさんの血尿は膀胱炎などの単なる泌尿器系の疾患ではないことが多いです。
子宮疾患は血尿による貧血で命に関わることもありますので、もし発症したら早期の対応をすることが重要となります。
また、今回ご紹介した症例は子宮内膜静脈瘤という病気でしたが、血尿の理由が子宮の悪性腫瘍の可能性もあります。
こういったことを予防していくには、若いうちに避妊手術をすることが最も有効です。
避妊手術で子宮を摘出していれば、子宮疾患は発症しなくなります。
女の子のうさぎさんを飼われている方は一度避妊手術を検討してみてはいかがでしょうか?
避妊手術をするかしないか悩まれている方は当院へご相談ください。

執筆担当:院長 渦巻浩輔

この記事を書いた人

渦巻浩輔

2013年大学卒業後、埼玉県坂戸市のブン動物病院で4年間の勤務医を務め、犬や猫、エキゾチックアニマルの診療に携わる。2016年からは東京都の小滝橋動物病院グループに勤務し、CTやMRI、心臓外科、脳神経外科を始めとした高度医療施設に身を置き、2019年からは同動物病院グループの市ヶ谷動物医療センターにてセンター長を務める。高度医療に携わりながら地域の中核病院として診療を行なった。2022年11月、東京都板橋区赤塚に成増どうぶつ病院を開院する。日本獣医循環器学会・日本獣医麻酔外科学会・獣医アトピー・アレルギー・免疫学会・日本獣医エキゾチック動物学会所属。特に循環器・呼吸器の診療を専門とし、心臓病についてのセミナー講師も行っている。