犬の鼻腔内異物について

鼻腔内異物とは、異物が鼻の中に入ることで鼻が詰まってしまい、呼吸に障害をきたしてしまう疾患です。
異物に気づかず長期に渡り異物が鼻腔内に存在すると、周囲に肉芽組織が形成され、さらに病態の悪化に繋がることもあります。
また、重度の呼吸困難を呈することで、肺に陰圧がかかり、二次性に陰圧性肺水腫を発症し致命的になることもあります。
症状は、急性のくしゃみ・逆くしゃみ・鼻汁・顔を振るなどが一般的です。

今回は鼻腔内異物を摘出した症例になります。

犬の鼻腔内異物の症例

症例は8歳3ヶ月のチワワさんで、昨晩から急に鼻が詰まり夜も眠れないくらいの呼吸困難を呈しているとのことで来院しました。
各種検査と問診により鼻咽頭における鼻腔内異物が疑われたため、すぐに内視鏡下で鼻腔内異物の確認を行いました。

内視鏡にて鼻咽頭を観察したところ、両方の鼻の道を塞ぐように異物が鼻に詰まっていました。
すぐにこの異物を摘出し、鼻道の開通を確認し、鼻腔洗浄を実施後麻酔を終了としました。

内視鏡で異物が鼻咽頭に詰まっていた。(画面中央の白いものが異物)

覚醒後、異物の影響で多少炎症は残るため鼻炎症状はありましたが、呼吸は劇的に改善しました。

摘出した鼻腔内異物(鶏肉)

鼻腔内異物は特徴的な臨床所見はあるにも関わらず、診断・治療が難しい場合もあります。

もし、飼っているワンちゃんの呼吸が急に苦しそうになった場合はすぐに動物病院にご相談ください。

執筆担当:院長 渦巻浩輔

この記事を書いた人

渦巻浩輔

2013年大学卒業後、埼玉県坂戸市のブン動物病院で4年間の勤務医を務め、犬や猫、エキゾチックアニマルの診療に携わる。2016年からは東京都の小滝橋動物病院グループに勤務し、CTやMRI、心臓外科、脳神経外科を始めとした高度医療施設に身を置き、2019年からは同動物病院グループの市ヶ谷動物医療センターにてセンター長を務める。高度医療に携わりながら地域の中核病院として診療を行なった。2022年11月、東京都板橋区赤塚に成増どうぶつ病院を開院する。日本獣医循環器学会・日本獣医麻酔外科学会・獣医アトピー・アレルギー・免疫学会・日本獣医エキゾチック動物学会所属。特に循環器・呼吸器の診療を専門とし、心臓病についてのセミナー講師も行っている。