モルモットの胸水について

「胸水」という言葉は聞いたことあるでしょうか?
胸水というのは胸の中に水が溜まってしまって肺が膨らまなくなり、呼吸困難になってしまう病態のことです。
胸水が溜まってしまう原因には様々なものがあって、

  • 腫瘍
  • 炎症
  • 心臓病
  • 低タンパク血症

などがあります。
どの病気に対しても治療は困難なため、様々な検査を行って、原因を特定してから治療に入ることが大事とされています。
ただ、人間と比べて小動物は検査を行うことが難しい場合もあるため、すぐに治療に入ることもあります。

今回ご紹介するのはモルモットで原因不明の胸水による呼吸困難が認められ治療を行った症例です。

胸水貯留により呼吸困難を呈したモルモット

症例は2歳8ヶ月のモルモットで、おかしな呼吸をしていて食欲がないとのことで来院されました。
モルモットは小動物なので可能な限りで検査を行ったところ胸水の貯留が認められました。

透明黄色の胸水が溜まっていました。

腫瘍の場合には胸水中に腫瘍細胞が見られることがあるのですが、今回はそういう腫瘍は見られず、また心臓病が原因で胸水が溜まることもありますが、心臓病も認められませんでした。残念ながら原因を特定することはできませんでしたが、試験的にお薬の投与を開始し、経過観察としました。

すると、幸いなことに胸水の貯留はなくなり元気になってくれました。

元気になってご飯も食べれるようになりました。

今回の症例のように胸水貯留があると呼吸困難になり命に関わることがあります。
飼われている動物がおかしな呼吸をしている場合はなるべく早く動物病院にいくようにしましょう。

執筆担当:院長 渦巻浩輔

この記事を書いた人

渦巻浩輔

2013年大学卒業後、埼玉県坂戸市のブン動物病院で4年間の勤務医を務め、犬や猫、エキゾチックアニマルの診療に携わる。2016年からは東京都の小滝橋動物病院グループに勤務し、CTやMRI、心臓外科、脳神経外科を始めとした高度医療施設に身を置き、2019年からは同動物病院グループの市ヶ谷動物医療センターにてセンター長を務める。高度医療に携わりながら地域の中核病院として診療を行なった。2022年11月、東京都板橋区赤塚に成増どうぶつ病院を開院する。日本獣医循環器学会・日本獣医麻酔外科学会・獣医アトピー・アレルギー・免疫学会・日本獣医エキゾチック動物学会所属。特に循環器・呼吸器の診療を専門とし、心臓病についてのセミナー講師も行っている。