犬の肛門周囲腺腫について

ワンちゃんの腫瘍にはたくさんのものが存在しています。
その中でも動物病院でよく見かける腫瘍の一つに肛門周囲腺腫というものがあります。
肛門周囲腺腫はその言葉通り主に肛門の周囲にある腺(皮脂腺)で発生する腫瘍です。
ただし、肛門周囲腺は尻尾などにもあるので、肛門周囲以外でも発生することがあります。
肛門周囲腺腫の発生は男性ホルモンのテストステロンが関与していると言われています。
そのため、去勢手術を行っていない高齢の男の子でこの肛門周囲腺腫が多いと言われています。
やはり若い時の去勢手術はとても大事ということですね。

今回ご紹介する症例は、肛門周囲腺腫を発症して外科手術を行った症例です。

肛門周囲腺腫の実際の症例

今回の症例は10歳の未去勢のワンちゃんです。
肛門の周囲にあるできものからの出血があって、今まで治療を受けてきたけど治らないとのことで来院されました。
その時の肛門の写真がこちらです。

○が出血していたできもの

肛門周囲にしこりができていることが分かりますね。
このワンちゃんは去勢手術をされていなかったため、今回の治療は去勢手術と腫瘍の切除を行いました。

一般的に、肛門周囲腺腫の手術は大きく切除しすぎると、術後に便失禁(うんちが漏れてしまう)をしてしまう合併症が生じることがあるため、慎重な手術が必要になります。

全ての腫瘍を取り切ることができました。

このワンちゃんの手術はスムーズに進行し、腫瘍もキレイに切除することができ、無事元気に退院してくれました。

現在の肛門の写真。再発もないですね。

肛門周囲腺腫は、去勢手術が一般的なものになった現代では、発生率が少なくなってきています。
実際、動物病院での肛門周囲腺腫の遭遇率も一昔前よりは低くなっています。
それほど肛門周囲腺腫は去勢手術を行うことで予防が可能な腫瘍なんです。
去勢手術を若い時に行うとこういった病気を予防できるという理由から、手術を検討してみるのはいかがでしょうか? 去勢手術をするか悩まれている方や、肛門周囲に出来物が出来てしまったなどあれば、動物病院にご相談ください。

執筆担当:院長 渦巻浩輔

この記事を書いた人

渦巻浩輔

2013年大学卒業後、埼玉県坂戸市のブン動物病院で4年間の勤務医を務め、犬や猫、エキゾチックアニマルの診療に携わる。2016年からは東京都の小滝橋動物病院グループに勤務し、CTやMRI、心臓外科、脳神経外科を始めとした高度医療施設に身を置き、2019年からは同動物病院グループの市ヶ谷動物医療センターにてセンター長を務める。高度医療に携わりながら地域の中核病院として診療を行なった。2022年11月、東京都板橋区赤塚に成増どうぶつ病院を開院する。日本獣医循環器学会・日本獣医麻酔外科学会・獣医アトピー・アレルギー・免疫学会・日本獣医エキゾチック動物学会所属。特に循環器・呼吸器の診療を専門とし、心臓病についてのセミナー講師も行っている。