犬の外鼻孔狭窄症について

飼っているわんちゃんがフガフガと音を出して呼吸をしていたり、寝ているときにいびきをかいていることはありませんか?
もしかしたらそれは外鼻孔狭窄症をはじめとした短頭種気道症候群かもしれません。

外鼻孔狭窄症とはその名の通り、外鼻の穴が狭い状態のことです。
フレンチブルドックやパグ、ペキニーズなどの短頭種に多い、短頭種気道症候群に含まれる疾患の一つで、先天的な(生まれつき)鼻軟骨の形態異常により鼻での呼吸がしづらいのが特徴です。
外鼻孔狭窄のある鼻の呼吸は気道に負荷がかかることで喉の奥にある軟口蓋にも影響を及ぼし、睡眠障害や呼吸困難、最悪の場合、突然死するケースもあります。
ただこういった呼吸に関連した症状だけでなく、嘔吐やオナラをよくするというような消化器症状を示したり、熱の発散も妨げるため熱中症のリスクも高いとも言われています。

外鼻孔狭窄症のない鼻(左)と外鼻孔狭窄症のある鼻(右)の写真です。

左の子の鼻の穴はコンマ型(楕円型のよう)に広がっているのに対し、右の子の鼻の穴はU字のように細いのがわかります。

残念ながら、外鼻孔狭窄症をはじめとした短頭種気道症候群は遺伝的な要因が関与しているため予防することはできません。
基本的には手術による治療がメインになります。
今回、短頭種気道症候群に対して手術を実施しましたので、ご報告いたします。

犬の外鼻孔狭窄症の症例

今回ご紹介するのは、1歳11ヶ月のフレンチブルドックさんで、狂犬病の予防接種の際に、いびきの音が大きい、呼吸がしづらいのも気になるということで来院されました。

写真の通り、鼻の穴はU字のように見え、狭くなっているのが分かります。
犬種、鼻の狭窄が明らかであること、いびきや呼吸がしづらいという症状から外鼻孔狭窄症と診断しました。本症例では臨床症状、各種検査で軟口蓋過長症、喉頭小嚢反転症例の併発も疑われました。

外鼻孔狭窄症を始めとした短頭種気道症候群は、呼吸障害や消化器症状が見られる場合はお薬で一時的に様子を見ることもありますが、内科治療だけでは治りません。

外鼻孔狭窄症の治療には鼻の一部を楔形に切除して、鼻の入り口を広げる手術が最も有効だと言われており、本症例でも手術を行いました。 また、外鼻孔狭窄単独の手術で症状が良化することもあまりありません。本症例では軟口蓋過長症と喉頭小嚢反転も認められたため、同時に軟口蓋切除と喉頭小嚢切除術も行ないました。

手術前に比べ、手術後の写真では鼻の穴が大きく広がったことがわかります。
手術後はいびきが減り、鼻からの呼吸もかなり楽になったようです。

短頭種気道症候群は進行性の病気であるとも言われているため、呼吸するのが辛そう、いびきやガーガーなどの呼吸音での異常がある、鼻の穴が狭いように見える、などの短頭種のワンちゃんを飼われている場合は若いうちに一度、動物病院を受診しましょう。

執筆担当:院長 渦巻浩輔

この記事を書いた人

渦巻浩輔

2013年大学卒業後、埼玉県坂戸市のブン動物病院で4年間の勤務医を務め、犬や猫、エキゾチックアニマルの診療に携わる。2016年からは東京都の小滝橋動物病院グループに勤務し、CTやMRI、心臓外科、脳神経外科を始めとした高度医療施設に身を置き、2019年からは同動物病院グループの市ヶ谷動物医療センターにてセンター長を務める。高度医療に携わりながら地域の中核病院として診療を行なった。2022年11月、東京都板橋区赤塚に成増どうぶつ病院を開院する。日本獣医循環器学会・日本獣医麻酔外科学会・獣医アトピー・アレルギー・免疫学会・日本獣医エキゾチック動物学会所属。特に循環器・呼吸器の診療を専門とし、心臓病についてのセミナー講師も行っている。