うさぎの肝葉捻転について

うさぎの肝葉捻転は肝臓の一部が捻れてしまって壊死していってしまう病気です。
肝臓が壊死すると肝臓からの出血によってショックに陥ったり、血栓ができてしまって亡くなってしまうこともあります。
そのため、肝葉捻転のうさぎにはある程度の緊急性を持って治療に臨まなければいけないです。
今回ご紹介する症例は、この肝葉捻転に対して手術を行ったうさぎの症例です。

肝葉捻転に対して手術を行ったうさぎ

症例はうさぎさんで食欲不振があるとのことで来院されました。

当院で胃の流れが悪いことが確認されたので、2日間点滴や腸の動きを良くする治療を行いましたが、良化しませんでした。 その経過を受けて検査をしたところ各種検査により、肝葉捻転と診断し、手術に踏み切りました。

ここからは手術の画像が表示されます。
苦手な方はご遠慮ください。

手術は全身麻酔をした上で行われました。
一般的にうさぎさんの全身麻酔は、犬や猫よりも呼吸が止まってしまうことが多く、リスクが高いと言われています。
今回の手術でも、呼吸が止まらないように慎重に行われました。
手術は腹部正中切開で肝臓を露出させました。

正常な肝臓が薄い赤い色なのに対して、捻転している肝臓は赤黒い色になっています。
捻転して血流が乏しい状態になっているということですね。
今回の手術では、この捻転した肝臓を根本から切除し、閉腹をし、終了しています。
今回の症例は、退院後食欲が正常まで戻るのに多少時間はかかりましたが、手術後から食事もしっかり取れるように回復しました。

↓手術後翌日の様子の動画です。

露出した肝臓

うさぎは犬や猫などの他の動物と比べて詳しく検査をすることが難しい動物です。
うさぎの食欲不振で検査ができなかった結果、実は肝葉捻転で命を落としてしまうこともあります。
ある報告では内科治療のみ行った肝葉捻転のうさぎの生存率は43%と言われています。
最近、昔に比べて肝葉捻転を診断する機会が増えたように感じます。
状態の悪化から肝葉捻転が疑わしい場合は一度検査をしてみることをおすすめします。

執筆担当:院長 渦巻浩輔

この記事を書いた人

渦巻浩輔

2013年大学卒業後、埼玉県坂戸市のブン動物病院で4年間の勤務医を務め、犬や猫、エキゾチックアニマルの診療に携わる。2016年からは東京都の小滝橋動物病院グループに勤務し、CTやMRI、心臓外科、脳神経外科を始めとした高度医療施設に身を置き、2019年からは同動物病院グループの市ヶ谷動物医療センターにてセンター長を務める。高度医療に携わりながら地域の中核病院として診療を行なった。2022年11月、東京都板橋区赤塚に成増どうぶつ病院を開院する。日本獣医循環器学会・日本獣医麻酔外科学会・獣医アトピー・アレルギー・免疫学会・日本獣医エキゾチック動物学会所属。特に循環器・呼吸器の診療を専門とし、心臓病についてのセミナー講師も行っている。