猫の腸閉塞について

猫が消化吸収できない異物を誤って食べてしまい、その異物が消化管で詰まってしまうと、食餌や液体が通過できなくなり、嘔吐・食欲廃絶などの臨床症状が激しく出現します。
通過できない状態が長時間続くと、詰まった場所の消化管にダメージが蓄積され、潰瘍・壊死・穿孔が発生するリスクが上昇し、命に関わります。

診断はレントゲン検査や超音波検査などの画像検査にて行い、治療は手術にて異物を摘出することで救命することが可能です。

猫の腸閉塞に対して外科手術を行った症例

今回は棚のおもちゃなどを誤食してしまった猫の症例です。
症例は5歳の猫ちゃんで、昨日から吐いており、今日は便臭の嘔吐物を吐いたとのことでした。
レントゲン検査・超音波検査にて異物による腸閉塞が疑われました。半日ほど点滴をして様子を見ましたが、異物が動かなかったため、その日の内に緊急的に手術を行いました。

超音波検査 閉塞した異物を確認

以下は手術の画像になります。
白黒写真にしてありますが、苦手な方はご注意ください。

開腹すると、一部の消化管が赤く腫れており異物が閉塞しているのが確認できました。

まずは用手にて異物が可動性があるかを確認し、その後詰まっていた異物を胃まで送り、胃の中より異物(布製のおもちゃ)を摘出し、無事手術を終わらせることができました。

異物が消化管で詰まっている

今回は術後も経過が非常に良く、すぐに元気になってくれました。
しかし、経過が長い場合や、食べた異物が長いヒモ状の場合や鋭利なものであった場合、予後に影響してくることもあります。

もしも、家のワンちゃんやネコちゃんが異物を誤食した場合は、なるべく早めに病院にご相談ください。

執筆担当:院長 渦巻浩輔

この記事を書いた人

渦巻浩輔

2013年大学卒業後、埼玉県坂戸市のブン動物病院で4年間の勤務医を務め、犬や猫、エキゾチックアニマルの診療に携わる。2016年からは東京都の小滝橋動物病院グループに勤務し、CTやMRI、心臓外科、脳神経外科を始めとした高度医療施設に身を置き、2019年からは同動物病院グループの市ヶ谷動物医療センターにてセンター長を務める。高度医療に携わりながら地域の中核病院として診療を行なった。2022年11月、東京都板橋区赤塚に成増どうぶつ病院を開院する。日本獣医循環器学会・日本獣医麻酔外科学会・獣医アトピー・アレルギー・免疫学会・日本獣医エキゾチック動物学会所属。特に循環器・呼吸器の診療を専門とし、心臓病についてのセミナー講師も行っている。