ウサギの急性胃拡張について

ウサギの緊急疾患の1つに急性胃拡張という疾患があります。
これは胃の筋肉の麻痺や痙攣ないし、腸に異物や毛球が詰まることによって、胃の中に胃液や食渣(食べた物)などの液体が貯留し、胃が重度に拡張することで生じます。
症状は食欲と元気、排便が全く無くなり、腹部の痛みによって歯ぎしりが生じたり、低体温にも陥ります。
診断は触診とレントゲン検査によって行い、場合によっては全身の評価をする目的に血液検査が行われることもあります。

ウサギの急性胃拡張の症例

今回は急性胃拡張になった症例です。

症例は、2歳2ヶ月のウサギで食欲が突然無くなったという主訴でした。
排便も出ておらず、低体温になっていました。

触診で急性胃拡張が疑われたため、レントゲン検査を実施しました。

青矢印:胃が重度に拡張している。

緊急性が高い疾患のため、飼い主様と相談し、入院にて治療を開始しました。

幸いなことに翌日には排便が認められるようになり、拡張していた胃も改善し、食欲も出始めたため、退院としました。

先にも話した通り、ウサギの急性胃拡張は緊急疾患です。
場合によっては発症後数時間で命に関わることもあります。

もしも、ウサギさんの食欲や元気が急に無くなった場合は、なるべく早く動物病院に受診することをお勧め致します。

食欲も出ました!

執筆担当:院長 渦巻浩輔

この記事を書いた人

渦巻浩輔

2013年大学卒業後、埼玉県坂戸市のブン動物病院で4年間の勤務医を務め、犬や猫、エキゾチックアニマルの診療に携わる。2016年からは東京都の小滝橋動物病院グループに勤務し、CTやMRI、心臓外科、脳神経外科を始めとした高度医療施設に身を置き、2019年からは同動物病院グループの市ヶ谷動物医療センターにてセンター長を務める。高度医療に携わりながら地域の中核病院として診療を行なった。2022年11月、東京都板橋区赤塚に成増どうぶつ病院を開院する。日本獣医循環器学会・日本獣医麻酔外科学会・獣医アトピー・アレルギー・免疫学会・日本獣医エキゾチック動物学会所属。特に循環器・呼吸器の診療を専門とし、心臓病についてのセミナー講師も行っている。